カテゴリー別 Top 5 – 2022年(通年)の資金調達

<半導体、ロボティクス、モビリティ、他>

Lineage 冷凍倉庫/輸送 1,700
SpaceX 宇宙輸送サービス(NASA、USSFも出資;時価総額$125B) 1,500
Anduril 無人哨戒システム(ドローン、無人潜水艇など;時価総額$8.5B) 1,500
GM/Cruise 自動運転車(ソフトバンクが出資) 1,350
Northvolt リチウムイオン電池(VWも出資) 1,100
TeraWatt EV充電インフラ(商用車向け) 1,100

<環境、エネルギー、食糧生産>

H2 Green Steel グリーン製鉄(CO2排出を95%削減;融資枠) 3,500
TerraPower ナトリウム冷却高速炉(SKも出資) 750
Octopus 電力販売 (再エネ100%;東京ガスも出資) 662
Climeworks CO2回収貯蔵(鉱物化) 650
The Shared Wood 環境プロジェクト開発(Nature-based Solutions;森林保護、土壌修復など;AXA、Engieも出資) 500
EcoVadis サステナビリティ評価(サプライチェーン環境監査) 500

<ライフサイエンス、ヘルスケア>

Verily 医療データ解析(Alphabet傘下) 1,000
Ultima ゲノム解析 600
Eikon 蛍光顕微鏡(生細胞内のタンパク質の動きを可視化) 518
Areteia 好酸球性喘息治療薬(経口投与;Sanofi、Googleも出資) 350
DispatchHealth 在宅救急診療(Blue Shield of California、Humanaも出資) 330

<教育、人材、働き方>

Byju’s 自習アプリ 800
Velocity グローバル人事管理 400
Emeritus オンライン経営学コース(MIT、コロンビア、ダートマスが設立;融資枠) 350
GoStudent オンライン家庭教師(時価総額$3.4B) 340
Pie スモールビジネス向け労災保険(Allianzも出資) 315

< ICTインフラ、エンタープライズ、マーケティング>

Securonix セキュリティデータ解析(SIEM) 1,000
Celonis プロセスマイニング(業務効率改善;$600Mは融資枠;時価総額$13B) 1,000
1Password パスワード管理(時価総額$6.8B) 620
ContentSquare アプリ/ウェブサイト最適化(顧客行動解析;ソフトバンクも出資;$200Mは融資枠;時価総額$5.6B) 600
Anthropic AIシステム 580

<フィンテック>

Settle B2B決済/資金管理(Eコマース企業向け) 2,280
FalconX 暗号通貨取引(機関投資家向け;時価総額$8B) 1,508
FNZ 金融機関DX支援(資産運用サービス) 1,400
Citadel マーケットメーカ(Paradigmも出資;時価総額$22B) 1,150
Checkout.com グローバル決済API(時価総額$40B) 1,000
Curve 決済カード/アプリ(複数のカードを1枚に統合;融資枠) 1,000

<メディア、コンシューマ>

Epic Games ゲーム開発(メタバース;ソニー、LEGOも出資;時価総額$31.5B) 2,000
Fanatics スポーツチームオフィシャルグッズ通販サイト 1,500
goPuff コンビニ即配(予定) 1,000
Aman リゾートホテル 900
CloudKitchens ゴーストキッチン(宅配専門レストラン厨房シェア;時価総額$1B) 850

米国VC統計チェック(2021年;通年)

【米国VCファンド募集】

2021年のファンド募集総額は$128Bで、前年から48%増加した。金融緩和の継続や好調なExitによる出資者への分配金の増加が追い風となった。

【米国VC投資活動】

2021年のVC投資総額は$330Bで、前年から98%ほぼ倍増した。投資件数は17,054件で前年を40%ほど上回った。

レートステージだけではなくシードやアーリーステージの資金調達も伸びている。フィンテックへの投資総額が前年の2.4倍に増加した。

CVC、投資信託、PEファンド、ヘッジファンドによる投資が活発化しており、案件の大型化やバリュエーションの上昇に寄与している。

【米国VC投資先Exit】

2021年のVC投資先Exitは前年を67%上回る1,875件だった。うちIPOは296件で全体の16%を占めた。

Exitバリュエーションの総額は$774Bと、前年の2.7倍に達しており、過去に例をみない水準となった。

【2022年に入って】

2021年のVC業界の活況は今後のスタートアップの発展に向けて大きなプラスになるだろう。しかし、多くのスタートアップが多くの資金を調達したということは、それだけスタートアップ間の競争が激しくなるということでもある。

グローバルな経済活動が様々な要因で阻害されるなか、潤沢な資金が人材不足やサプライチェーン問題に拍車をかけ、資金的な余裕があってもコスト高で削られてしまう。会社づくりの環境としては必ずしも恵まれているとはいえないかもしれない。

2022年はCOVID-19の収束や社会経済活動の正常化が期待される一方、オミクロン株の感染拡大、コロナ経済対策の後遺症ともいえるインフレ、ウクライナや台湾をめぐる地政学リスク、トンガ沖噴火のような自然災害リスクが顕在化している。

2022年1月21日現在、インフレの深刻化と利上げの必要性、金融引き締めによる景気後退の懸念などを背景に、テクノロジー株や暗号資産の調整局面が続いている。2021年のIPO銘柄の3分の2が年末時点で公募価格割れとなっていた。

この先どこまで調整が進むかは分からないが、過去の大きな調整局面では、上場株のクラッシュから少しタイムラグがあって、VCの投資スタンスにも変化が見られた。Back to Basic、Path to Profitability、Extending the Runwayなどが強調されるようになる。

今年は昨年とは打って変わって市場の淘汰圧が高まり、スタートアップの選別が進むことになるかもしれない。イノベーションの担い手、社会課題を解決する者、持続可能な経済成長のエンジンとして、高まった期待に応えられますように!

データ出典:National Venture Capital Association米国IPO週報CNBC

定点観測(2021年;通年)

【株式市場】

• 2021年はS&P500が27.7%上昇、DJIが19.8%上昇、NASDAQが21.4%上昇;S&P500とDJIが一時史上最高値更新

○ S&P500 (^GSPC) 2020年12月末3,732 → 2021年12月末4,766(年間27.7%上昇;一時4,808で史上最高値更新)

○ DJI (^DJI) 2020年12月末30,335 → 2021年12月末36,338(年間19.8%上昇;一時36,679で史上最高値更新)

○ NASDAQ (^IXIC) 2020年12月末12,888 → 2021年12月末15,644(年間21.4%上昇)

【金利、為替、商品、暗号資産、雇用、物価】

• 米10年国債 (^TNX):2020年12月末0.92% → 2021年12月末1.51%(年間59bp上昇)

• 米ドル(JPY/USD;JPY=X):2020年12月末103.12 → 2021年12月末115.06(年間11.6%円安)

• 原油(WTI先物;CL=F):2020年12月末49 → 2021年12月末75(年間67%上昇)

• ガソリン小売価格($/ガロン):2020年12月末2.33 → 2021年12月末3.38(年間45%上昇)

• Bitcoin($;BTC-USD):2020年12月末29,001 → 2021年12月末46,486(年間60%上昇)

• 失業率:2020年12月6.7% → 2021年11月4.2%(年間2.5%改善)

• 物価上昇率(CPI;前月比):2020年12月0.4% → 2021年11月0.8%(前年同期比6.8%;39年ぶりの高水準;ガソリン、住居費、食品、自動車が高い)

【米国IPO】(IPOHomeのデータ)

• 2021年397社(前年比80%増)

【ベンチャー資金調達】(米国IPO週報の集計)

• 2021年は2,667社(前年比24%増)、$300B(同104%増)

○ ICTインフラ/エンタプライズ/マーケティングが27%、半導体/ロボティクス/モビリティが18%、フィンテックが18%、ライフサイエンス/ヘルスケアが16%を占めた(金額ベース)

○ $1Bを超える大型資金調達は、GM/Cruise(自動運転車)、Northvolt(リチウムイオン電池)、Rivian(電気自動車)、Alphabet/Waymo(自動運転車)、Robinhood(株式投資アプリ)、Lineage(食品物流倉庫)、Commonwealth Fusion(核融合炉)、Databricks(データ統合解析)、Didi(モビリティサービス)、Articulate(オンライン企業研修アプリ)、OneWeb(衛星インターネット)、Sierra Space(商用宇宙ステーション)、Lacework(クラウドセキュリティ)、Byju’s(自習アプリ)、Integrity(保険代理店向け顧客体験管理)、goPuff(コンビニ即配)、Telegram(メッセージジングアプリ)、Thrasio(コンシューマ製品;Amazonセラー買収)、Klarna(Eコマース決済;BNPL)、NYDIG(ビットコイン資産運用)、Celonis(プロセスマイニング)など

○ 本データのカバレッジ率については下記URLの「ベンチャーファイナンス」についての説明をご参照ください
https://usipoweekly.com/about/