米国VC統計チェック(2021年;通年)

【米国VCファンド募集】

2021年のファンド募集総額は$128Bで、前年から48%増加した。金融緩和の継続や好調なExitによる出資者への分配金の増加が追い風となった。

【米国VC投資活動】

2021年のVC投資総額は$330Bで、前年から98%ほぼ倍増した。投資件数は17,054件で前年を40%ほど上回った。

レートステージだけではなくシードやアーリーステージの資金調達も伸びている。フィンテックへの投資総額が前年の2.4倍に増加した。

CVC、投資信託、PEファンド、ヘッジファンドによる投資が活発化しており、案件の大型化やバリュエーションの上昇に寄与している。

【米国VC投資先Exit】

2021年のVC投資先Exitは前年を67%上回る1,875件だった。うちIPOは296件で全体の16%を占めた。

Exitバリュエーションの総額は$774Bと、前年の2.7倍に達しており、過去に例をみない水準となった。

【2022年に入って】

2021年のVC業界の活況は今後のスタートアップの発展に向けて大きなプラスになるだろう。しかし、多くのスタートアップが多くの資金を調達したということは、それだけスタートアップ間の競争が激しくなるということでもある。

グローバルな経済活動が様々な要因で阻害されるなか、潤沢な資金が人材不足やサプライチェーン問題に拍車をかけ、資金的な余裕があってもコスト高で削られてしまう。会社づくりの環境としては必ずしも恵まれているとはいえないかもしれない。

2022年はCOVID-19の収束や社会経済活動の正常化が期待される一方、オミクロン株の感染拡大、コロナ経済対策の後遺症ともいえるインフレ、ウクライナや台湾をめぐる地政学リスク、トンガ沖噴火のような自然災害リスクが顕在化している。

2022年1月21日現在、インフレの深刻化と利上げの必要性、金融引き締めによる景気後退の懸念などを背景に、テクノロジー株や暗号資産の調整局面が続いている。2021年のIPO銘柄の3分の2が年末時点で公募価格割れとなっていた。

この先どこまで調整が進むかは分からないが、過去の大きな調整局面では、上場株のクラッシュから少しタイムラグがあって、VCの投資スタンスにも変化が見られた。Back to Basic、Path to Profitability、Extending the Runwayなどが強調されるようになる。

今年は昨年とは打って変わって市場の淘汰圧が高まり、スタートアップの選別が進むことになるかもしれない。イノベーションの担い手、社会課題を解決する者、持続可能な経済成長のエンジンとして、高まった期待に応えられますように!

データ出典:National Venture Capital Association米国IPO週報CNBC

定点観測(2021年;通年)

【株式市場】

• 2021年はS&P500が27.7%上昇、DJIが19.8%上昇、NASDAQが21.4%上昇;S&P500とDJIが一時史上最高値更新

○ S&P500 (^GSPC) 2020年12月末3,732 → 2021年12月末4,766(年間27.7%上昇;一時4,808で史上最高値更新)

○ DJI (^DJI) 2020年12月末30,335 → 2021年12月末36,338(年間19.8%上昇;一時36,679で史上最高値更新)

○ NASDAQ (^IXIC) 2020年12月末12,888 → 2021年12月末15,644(年間21.4%上昇)

【金利、為替、商品、暗号資産、雇用、物価】

• 米10年国債 (^TNX):2020年12月末0.92% → 2021年12月末1.51%(年間59bp上昇)

• 米ドル(JPY/USD;JPY=X):2020年12月末103.12 → 2021年12月末115.06(年間11.6%円安)

• 原油(WTI先物;CL=F):2020年12月末49 → 2021年12月末75(年間67%上昇)

• ガソリン小売価格($/ガロン):2020年12月末2.33 → 2021年12月末3.38(年間45%上昇)

• Bitcoin($;BTC-USD):2020年12月末29,001 → 2021年12月末46,486(年間60%上昇)

• 失業率:2020年12月6.7% → 2021年11月4.2%(年間2.5%改善)

• 物価上昇率(CPI;前月比):2020年12月0.4% → 2021年11月0.8%(前年同期比6.8%;39年ぶりの高水準;ガソリン、住居費、食品、自動車が高い)

【米国IPO】(IPOHomeのデータ)

• 2021年397社(前年比80%増)

【ベンチャー資金調達】(米国IPO週報の集計)

• 2021年は2,667社(前年比24%増)、$300B(同104%増)

○ ICTインフラ/エンタプライズ/マーケティングが27%、半導体/ロボティクス/モビリティが18%、フィンテックが18%、ライフサイエンス/ヘルスケアが16%を占めた(金額ベース)

○ $1Bを超える大型資金調達は、GM/Cruise(自動運転車)、Northvolt(リチウムイオン電池)、Rivian(電気自動車)、Alphabet/Waymo(自動運転車)、Robinhood(株式投資アプリ)、Lineage(食品物流倉庫)、Commonwealth Fusion(核融合炉)、Databricks(データ統合解析)、Didi(モビリティサービス)、Articulate(オンライン企業研修アプリ)、OneWeb(衛星インターネット)、Sierra Space(商用宇宙ステーション)、Lacework(クラウドセキュリティ)、Byju’s(自習アプリ)、Integrity(保険代理店向け顧客体験管理)、goPuff(コンビニ即配)、Telegram(メッセージジングアプリ)、Thrasio(コンシューマ製品;Amazonセラー買収)、Klarna(Eコマース決済;BNPL)、NYDIG(ビットコイン資産運用)、Celonis(プロセスマイニング)など

○ 本データのカバレッジ率については下記URLの「ベンチャーファイナンス」についての説明をご参照ください
https://usipoweekly.com/about/

Year in Review 2021

【2021年の米国IPO市場】

2021年の米国市場での株式公開は397社(前年比80%増)で、2000年以来の高水準となりました。業界別の内訳は、ヘルスケアが39%、テクノロジーが27%、コンシューマが11%となっています。

新型コロナ流行の長期化にもかかわらず、大規模な経済対策、金融緩和の継続、経済正常化への期待を背景に、主要な株価指標が史上最高値を更新するなかで、IPOも記録的な活況となりました。

時価総額が$20Bを超える大型案件として、Coinbase、Rivian、DiDi、Coupang、Nu、Robinhood、UiPath、AppLovin、Roblox、GlobalFoundries、Toast、Full Truck Allianceなどがありました。

一方で、景気回復への期待による景気敏感株へのシフト、インフレの深刻化による利上げの前倒し決定などにより、テクノロジー/新興株は調整局面に入っており、2021年のIPOの多くは公募価格割れになっています。

通常のIPOとは別に604社のSPAC(特別目的買収会社;白紙小切手会社)が株式公開によって1,400億ドル超の資金を調達しました。SPACによる未公開企業の買収(いわゆる逆さ上場)も活発化しています。

逆さ上場の大型案件として、Grab、Ginkgo、Aurora、Roivant、WeWork、Rocket Lab、Cvent、IronQ、EQRx、Embark、などがありました。第3四半期までの9か月間で181件の逆さ上場があったそうです。

2020年に成立した「外国企業説明責任法」に加えて、中国政府による大手ハイテク企業への引き締めもあり、中国企業の米国IPOは2021年7月を最後に途絶えています。Didiの株価は上場時から69%下落しており、米国上場廃止/香港上場の手続きを開始しました。

VC投資先のIPOによるExitは第3四半期までの9か月間で221件と前年の3.3倍のペースで推移しています。

2022年のIPO候補として、Stripe、Klarna、Revolut、Chime、Plaid、Cybereason、Databricks、Everlaw、Rippling、Tanium、Talkdesk、ServiceTitan、Honor、Guild Education、MasterClass、Instacart、Divvy、Glossier、Lower、Thrasio、TripActions、Farmers Business Network、Impossible Foods、Verily、Flexport、HoneyBook、Houzz、Patreon、Quora、Relativity Space、などが期待されています。

  • IPO件数: 397社(2020年221社、2019年162社、2018年193社)*
  • IPO調達総額: $143B(2020年$78B、2019年$46B、2018年$47B)
  • IPO後の平均リターン: マイナス11%(2020年111%;2021年のS&P500は29%)**

* 2021年の日本のIPO件数は125社(2020年93社、2019年86社、2018年97社)
** Renaissance US IPO Index:直近2年間の米国IPO銘柄について時価総額ベースで上位80%を加重平均した指標(米国投資顧問会社の上場投資信託商品);2021年12月30日引値ベース

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データ出典:National Venture Capital Association、Reneissance Capital、IPOScoop、White & Case、米国IPO週報