米国VC統計チェック(2022年;通年)

【米国VCファンド募集】

2022年のファンド募集総額は$163Bで、前年から6%増加した。

市場環境は悪化しているが、昨年来の勢いが残っていたのと、実績あるVCのファンド募集が続いた。

VCの投資余力は2022年9月末時点で過去最大の$290Bに達している。

【米国VC投資活動】

2022年のVC投資総額は$238Bで、前年から31%減少した。投資件数は15,852件で前年を14%ほど下回った。

とくにレートステージ以降の資金調達の金額やバリュエーションが大幅に下落している。

投資信託、PEファンド、ヘッジファンドによる投資が急減したが、CVCによる投資は比較的に堅調である。

【米国VC投資先Exit】

2022年のVC投資先Exitは前年を37%下回る1,208件だった。うちIPOは76件で全体の6%を占めた。

Exitバリュエーションの総額は$71Bと、前年の10分の1弱に落ち込んでいる。

データ出典:National Venture Capital Association米国IPO週報

Year in Review 2022

【2022年の米国IPO市場】

2022年の米国市場での株式公開は71社(前年比82%減)で、2009年以来の低水準でした。調達総額は$8Bで前年($143B)の18分の1に減りました。

背景として、インフレ悪化と金融引き締め、大手ハイテク企業の成長鈍化などによる株式市場の低迷と投資家のリスク回避傾向があります。

業界別の内訳は、ヘルスケアが30%(前年39%)、テクノロジーが27%(前年27%)、コンシューマが15%(前年11%)となっています。

時価総額が$10Bを超える大型案件として、Mobileye(ADAS/自動運転システム;Intel傘下)、Corebridge(退職金運用/生命保険;AIGカーブアウト)がありました。

前年は$20Bを超える案件が12件あったので、IPOの件数、調達金額だけでなく、時価総額も下方修正されていると言えそうです。

2021年7月から途絶えていた中国企業の米国IPOは、2022年2月のMeihua(病院/薬局向け消耗器具備品)を皮切りに、中小型株の上場が再開しています。

SPAC(特別目的買収会社;白紙小切手会社)のIPOは84件(前年は613件)、SPACによる未公開企業の買収(いわゆるde-SPACによる逆さ上場)は103件(前年は604件)でした。

de-SPACの注目案件(時価総額$2B<)として、MSP Recovery(医療費回収代行)、Flexjet(プライベートジェットサービス)、LanzaTech(代替燃料)、Grindr(LGBTQ+向けマッチングアプリ)、X-energy(小型モジュール原子炉)などがありました。

VC投資先のIPOによるExitは第3四半期までの9か月間で59件と前年同時期(221件)を73%下回るペースで推移しています。

2023年のIPO候補として、Arctic Wolf(セキュリティオペレーションセンタ)、Databricks(データ統合解析)、Flexport(グローバル貨物輸送フォワーダ)、Stripe(オンライン決済API)、Revolut(デジタル銀行)、Plaid(銀行口座接続API)、Instacart(スーパー宅配)、Guild Education(従業員教育研修)、Faire(生活雑貨卸売)、TripActions(出張管理)、Lyra Health(メンタルヘルスケア)、Plenty(植物工場)、Tempus(ゲノム検査)、Canva(グラフィックデザインツール)、Icon(3Dプリンティング住宅)などが期待されています。

  • 2022年のIPO件数: 71社(2021年397社、2020年221社)*
  • 2022年のIPO調達総額: $8B(2020年$143B、2020年$78B)
  • 2022年のIPO後の平均リターン: ▲57%(2021年▲11%;2020年111%)**

* 2021年の日本のIPO件数は91社(2021年125社、2020年93社)
** Renaissance US IPO Index:直近2年間の米国IPO銘柄について時価総額ベースで上位80%を加重平均した指標(米国投資顧問会社の上場投資信託商品);2022年12月29日引値ベース

データ出典:National Venture Capital Association、Reneissance Capital、IPOScoop、SPACInsider、米国IPO週報


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定点観測(2022年;通年)

【株式市場】

• 2022年はS&P500が19%下落、DJIが9%下落、NASDAQが33%下落;背景として、コロナ後の経済再開による人手不足やサプライチェーン問題の長期化(中国コロナ対策、ウクライナ戦争)によるインフレ悪化と金融引き締め、大手ハイテク企業の成長鈍化など

○ S&P500 (^GSPC) 2020年12月末3,732 → 2021年12月末4,766(年間28%上昇;12月に4,808で史上最高値更新)→ 2022年12月末3,840(年間19%下落;1月に4,819で史上最高値更新)

○ DJI (^DJI) 2020年12月末30,335 → 2021年12月末36,338(年間19.8%上昇;12月に36,679で史上最高値更新)→ 2022年12月末33,147(年間9%下落;1月に36,953で史上最高値更新)

○ NASDAQ (^IXIC) 2020年12月末12,888 → 2021年12月末15,644(年間21.4%上昇)→ 2022年12月末10,466(年間33%下落)

【金利、為替、商品、暗号資産、雇用、物価】

• 米10年国債 (^TNX):2020年12月末0.92% → 2021年12月末1.51%(年間59bp上昇)→ 2022年12月末3.87%(年間236bp上昇)

• 米ドル(JPY/USD;JPY=X):2020年12月末103.12 → 2021年12月末115.06(年間11.6%円安)→ 2022年12月末131.13(年間14%円安)

• Bitcoin($;BTC-USD):2020年12月末29,001 → 2021年12月末46,486(年間60%上昇)→ 2022年12月末16,604(年間64%下落)

• 失業率:2020年12月6.7% → 2021年11月4.2%(年間2.5%下落)→ 2022年11月3.7%(年間0.5%下落)

• 原油(WTI先物;CL=F):2020年12月末49 → 2021年12月末75(年間67%上昇)→ 2022年12月末80(年間7%上昇)

• ガソリン小売価格($/ガロン):2020年12月末2.33 → 2021年12月末3.38(年間45%上昇)→ 2022年12月末3.20(年間5%下落)

• 物価上昇率(CPI;前月比):2020年12月0.4% → 2021年11月0.8%(前年同期比6.8%)→ 2022年11月0.1%(前年同期比7.1%)

【米国IPO】(IPOHomeのデータ)

• 2020年218社 → 2021年397社(前年比82%増)→ 2022年71社(前年比82%減)

【ベンチャー資金調達】(米国IPO週報の集計)

• 2020年は1,936社が$147Bを調達 → 2021年は2,843社(前年比47%増)が$300B(前年比104%増)を調達 → 2022年は2,667社(前年比±0%)が$227B(前年比24%減)を調達

○ 2022年は、ICTインフラ/エンタプライズ/マーケティングが23%、フィンテックが19%、半導体/ロボティクス/モビリティが16%、ライフサイエンス/ヘルスケアが16%を占めた(金額ベース)

○ 2022年の$1Bを超える大型資金調達は、H2 Green Steel(グリーン製鉄)、Settle(B2B決済/資金管理)、Epic(メタバースゲーム)、Lineage(冷凍倉庫/輸送)、FalconX(機関投資家向け暗号資産取引)、Fanatics(スポーツチームオフィシャルグッズ通販サイト)、SpaceX(宇宙輸送サービス)、Anduril(無人哨戒システム)、FNZ(金融機関DX支援)、GM/Cruise(自動運転車)、Citadel(マーケットメーカ)、Northvolt(リチウムイオン電池)、TeraWatt(商用車向けEV充電インフラ)、Securonix(セキュリティデータ解析)、Celonis(プロセスマイニング)、Checkout.com(グローバル決済API)、Curve(決済カード/アプリ)、goPuff(コンビニ即配)、Verily(医療データ解析)など

○ 本データのカバレッジ率については下記URLの「ベンチャーファイナンス」についての説明をご参照ください
https://usipoweekly.com/about/