最近のスタートアップ資金調達から考えるブロックチェーンの今後

<ポイント>

・ブロックチェーン関連スタートアップの資金調達は2022年から2023年にかけて急減したが、2024年にはいって回復基調にあるように見える

・資金調達の内訳は分散型金融(DeFi)が4割強を占めているが、DeFiを含む分散型アプリ(dApps)に使われているEthereumの高速化や代替チェーンへの投資も増加傾向にある

・多様化するブロックチェーンのエコシステムをつなぐ技術として、ブロックチェーンのブリッジやモジュール化がある

・dAppsが異なるブロックチェーン間でスムーズに情報や資産のやり取りをしたり、状況に応じて最も有利なブロックチェーンを使い分けたりすることが可能になりつつある


2024年1月にSECがBitcoin現物ETFを承認したことや利下げへの期待からBitcoinは3月に史上最高値($73,780)をつけた。今週中にもEthereum現物ETFが承認される可能性があり市場は期待に包まれている(5月22日現在)。これまで暗号資産市場の浮き沈みにも拘わらずブロックチェーン技術への投資や改善の取り組みは連綿と続いてきた。

暗号資産投資情報サービスのThe Blockによれば、暗号資産やブロックチェーンに関連するスタートアップへのVC投資は2021年の$29B、2022年の$32Bから2023年は$11Bに減少した。2022年のピークから約3分の1に落ち込んでいるが、その前のピークだった2018年の$8B、2019年、2020年の$3Bに比べると高い水準を維持している。

米国IPO週報のデータを集計したところ、2023年のブロックチェーン関連スタートアップの資金調達は$2.2Bだった(米国市場を中心に$12M以上の資金調達をカバー)。2024年1月から4月までの資金調達はすでに$1.9Bに達していて、あくまで参考値ではあるが、前年を159%上回るペースとなっている。

ブロックチェーン関連スタートアップの資金調達の内訳(金額ベース)を見ると、昨年も今年も分散型金融(DeFi)が4割強を占めている。その他の分散型アプリケーション(dApps)は昨年の31%から今年は10%に減少している。一方で、Layer 1のスタートアップが3%から20%、Layer 2のスタートアップが8%から19%に増加している。

ブロックチェーンのレイヤー構造は、Layer 1が基盤ブロックチェーン、Layer 2がそのスケーリング、Layer 3以上がアプリケーション層となっている。EthereumはLayer 1のブロックチェーンの代表例のひとつであり、スマートコントラクトを実装していることで、dAppsの開発運用プラットフォームとして高いシェアを誇っている。

Ethereumのスケーラビリティについては、処理速度の制約(一説によれば昨年末時点で毎秒15件程度)や手数料(ガス代)の高騰が課題となっている。渋滞緩和のため、2022年9月にコンセンサスアルゴリズムの移行(Proof of WorkからProof of Stakeへ)、2024年3月にシャーディングの実装(並列処理による負荷分散)が行われた。

EthereumのLayer 2 スケーリングは、Ethereumの分散性やセキュリティを犠牲にせず、処理速度を向上する取り組みである。最近の典型的なスタートアップとしては、SuccinctMatterLabsのように、オフチェーン(Ethereumの外)で計算を実行して有効性証明だけをチェーン(Ethereum)に送信するゼロ知識ロールアップがある。

Layer 1の典型的なスタートアップは、MonadBerachainのようにEthereumの代替を目指すブロックチェーンで、毎秒10,000件といった高速処理を特長としている。Ethereumとは異なるコンセンサスアルゴリズムを採用しているが、Ethereum仮想マシン(EVM)互換であることでEthereumのアプリをそのまま使うことができる。

このように多様化するブロックチェーンのエコシステムをつなぐ技術として、ブロックチェーンのブリッジ(最近資金調達したスタートアップでいえばWormholePolyhedra)やモジュール化(例えばモジュール型データ可用性ネットワークCelestia0G)があり、前述のスケーリングでも大きな役割を果たす。

このような様々な取り組みによって、既存ブロックチェーンのスケーラビリティ問題を克服しつつ、dAppsが異なるブロックチェーン間でスムーズに情報や資産のやり取りをしたり、状況に応じて最も有利なブロックチェーンを使い分けたりすることが可能になり、非中央集権的なインターネット(Web3)の実現に近づくことが期待できる。


<ブロックチェーン関連スタートアップの資金調達(2024年1月~4月;上位3社)>

分散型アプリ(DeFiを含む)

会社名 製品サービス(備考) 調達額($M) URL
Nebeus 暗号資産ウォレット(マルチカレンシー口座;British Business Bankも出資) 272 https://nebeus.com/
EigenLayer Ethereumステーキング 100 https://www.eigenlayer.xyz/
Freechat Web3アプリ(暗号化メッセージングなど) 80 https://www.freechat.world/

Layer 2

Succinct ゼロ知識仮想マシン(ロールアップ;オープンソース) 55 https://succinct.xyz/
Eclipse Ethereumスケーリング(Solana仮想マシン;CelestiaとのパラレルLayer 2) 50 https://www.eclipse.xyz/
MatterLabs Ethereumスケーリング(ゼロ知識;ICO) 50 https://matter-labs.io/

Layer 1

Monad ブロックチェーン(EVM互換Layer 1;10K tps;Animocaも出資) 225 https://www.monad.xyz/
Berachain ブロックチェーン(EVM互換Layer 1;Proof of Liquidity;Samsung、Animocaも出資) 100 https://www.berachain.com/
Flare ブロックチェーン(EVM互換Layer 1;データ機能を強化) 35 https://flare.network/

ブリッジ、モジュール化

0G モジュラー型AIブロックチェーン(Data Availability Layer;Samsung、Animoca、Allianceも出資) 35 https://0g.ai/
Avail ウェブ3インフラレイヤー(Unification Layer;Polygonスピンアウト) 27 https://www.availproject.org/
Polyhedra クロスチェーンブリッジ(ゼロ知識) 20 https://polyhedra.network/

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