Category Archives: 米国IPO週報 × SDGs

SDGs(持続可能な開発目標)について最近の「米国IPO週報」から関連するスタートアップをピックアップしてみました。

米国IPO週報 x SDGs:Goal 3 Good Health and Well-Being

Goal 3:人々に保健と福祉を「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」

(関連アジェンダ)

3.5 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。

(関連カテゴリー)

<ライフサイエンス、ヘルスケア>

Goal 3 Good Health and Well-Beingはとても幅広い概念なので、バイオ創薬、医療機器、健康保険、フィットネスなど、<ライフサイエンス、ヘルスケア> 分野のすべてのスタートアップが該当するといっても過言ではない。新型コロナmRNAワクチンのBioNTechModernaはパンデミックへの迅速な対応という観点からスタートアップの存在価値を印象づけた。株式市場においても、IPO後の時価総額の推移は、それぞれ2年弱で27倍、3年弱で22倍と相応の評価を受けている。一方で、これらのワクチンの供給はまだ先進国に偏っており(WHOが先進国における3回目のブースターを批判しているように)SDGsの観点からはまだ道半ばといえる。アジェンダ3.5の「薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療」に関しては、依存性が低い鎮痛薬の開発やデジタル治療の取り組みが進んでいる。関連スタートアップとして、非オピオイド鎮痛薬のCentrexion、依存症デジタル治療のQuit GeniusGroupsPearなどがある。その他にもユニークなアプローチで人々の健康や福祉を引き上げてくれそうなものを関連スタートアップとして取り上げてみた。

(関連スタートアップ)

ドローン医療物資輸送のZiplineが$250M
https://flyzipline.com/

集団遺伝学的公衆衛生管理のColorが$167M(遺伝性疾患発病リスク診断、COVID-19検査;$1.5B)
https://www.color.com/

ポータブルMRIのHyperfineが$90M(Googleも出資)
https://hyperfine.io/

問診アプリのAdaが$90M(チャットボット;Bayer、Samsungも出資)
https://ada.com/

ポータブル網膜スキャナのTesseractが$80M(高血圧、糖尿病、アルツハイマ病、心筋梗塞などの予防診断)
https://www.tesseracthealth.com/

高齢者生活支援のPapaが$60M(孫世代の大学生を派遣)
https://www.joinpapa.com/

依存症デジタル治療のQuit Geniusが$64M(タバコ、アルコール、オピオイド)
https://www.quitgenius.com/

オピオイド依存症治療プログラムのGroupsが$60M
https://groupsrecovertogether.com/

アルツハイマ病遠隔診断アプリのLinusが$55M
https://linus.health/

ポータブル脳波計(EEG)のCeribellが$53M
https://www.ceribell.com/

集団ゲノミクスのHelixが$50M(COVID-19検査など)
https://www.helix.com/

タンクレス一酸化窒素(血管拡張剤)吸入システムのVeroが$50M(急性呼吸窮迫症候群、新生児遷延性肺高血圧症、COVID-19などの治療)
https://www.vero-biotech.com/

薬物乱用治療のPearが$20M(薬剤とアプリを併用)
https://peartherapeutics.com/

遠隔メンタルヘルスケアのLucid Laneが$16M(依存症など)
https://www.lucidlane.com/

オピオイド依存症遠隔治療プログラムのOpheliaが$15M
https://ophelia.com/

VerImmune Closes $2.5M Seed Financing(既存の免疫記憶をがん治療に再利用)
https://vcnewsdaily.com/verimmune/venture-capital-funding/mmsyrtcgds

*金額は直近ラウンド;調達時期は2021年(8月末まで)

(関連IPO)

BioNTech(BNTX)
https://biontech.de/
・バイオ(ドイツMainz)
・がん個別化治療;転移性黒色腫など
・設立2008年、従業員1,179人
・売上$150M、損失$127M、時価総額$3.4B
・$150M調達、初日5%下落(2019年10月)
→ 直近の売上$7.8B、利益$4.1B、時価総額$92.6B(2年弱で27倍)

Moderna (MRNA)
https://www.modernatx.com/
・バイオ(マサチューセッツ州Cambridge)
・mRNA治療プラットフォーム;感染症、がん、心血管疾患など
・設立2010年、従業員700人
・売上$192M、損失$299M、時価総額$7.5B
・$604M調達、初日19%下落(2018年12月)
→ 売上$7B、利益$3.9B、時価総額$166.3B(3年弱で22倍)

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米国IPO週報 x SDGs:Goal 4 Quality Education

Goal 4:質の高い教育をみんなに「すべての人々へ包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」

(関連アジェンダ)

4.4 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。

(関連カテゴリー)

<教育、人材、働き方>

IT革命によって民主化が進んだ分野のひとつとして教育がある。やる気とスマホさえあれば独学できる時代だとも言われている。とはいえ、ネット環境や学習時間は地域のインフラや家庭の経済力などによる格差が大きく、教育以前の問題として解決すべき様々な課題とリンクしている。また、いったん身に着けたスキルも技術進歩の加速や産業構造の変化により陳腐化しやすくなっている。教育そして雇用は、国家、企業、家計の共通の懸案であり、その底上げを図るスタートアップの取り組みが活発化している。

(関連スタートアップ)

従業員スキル開発/測定のDegreedが$153M
https://degreed.com/

バーチャル研究室のLabsterが$60M(科学教育向け実験シミュレーション)
https://www.labster.com/

学費立替プランのLeifが$60M(返済は就職後の収入シェア;$50Mは融資枠)
https://leif.org/

コーディングスクールのBitwiseが$50M(低所得地域で起業支援)
https://bitwiseindustries.com/

コーディングスクールのCodecademyが$40M(オンライン)
https://www.codecademy.com/

バーチャル職業体験のForageが$25M(無料研修)
https://www.theforage.com/

数学アプリのPhotomathが$23M(スキャン→解説)
https://photomath.app/en/

コーディングスクールのHolbertonが$20M
https://www.holbertonschool.com/

起業スクールのOn Deckが$20M
https://www.beondeck.com/

VR研修のInterplayが$18M
https://www.interplaylearning.com/

職業研修アプリのSana Labsが$18M(AIによる個別化学習)
https://www.sanalabs.com/

データサイエンス/AIスキル測定サイトのWorkera.aiが$16M
https://workera.ai/

大学進学支援のAdmitHubが$14M(チャットボット)
https://www.admithub.com/

アプリ内従業員研修のSpekitが$12M
https://spekit.co/

*金額は直近ラウンド;調達時期は2021年(8月末まで)

(関連IPO)

Coursera(COUR)
https://www.coursera.org/
・教育(カリフォルニア州Mouontain View)
・オンライン大学講義
・設立2011年、従業員779人
・売上$294M、損失$67M、時価総額$5.3B
・$519M調達、初日36%下落(2021年4月)

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米国IPO週報 x SDGs:Goal 5 Gender Equality

Goal 5:ジェンダー平等を実現しよう「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」

(関連アジェンダ)

5.b 女性のエンパワーメント促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。

(関連カテゴリー)

<教育、人材、働き方><ライフサイエンス、ヘルスケア>

米国では2021年に史上初めての女性副大統領が誕生したばかりだ。Fortune 500(米国大企業の売上高上位500社)の女性CEOは2021年6月時点で41名と増加傾向にあるが全体の8%に過ぎない。女性の創業者が今も経営陣に残っている上場企業は20社で(2020年12月時点)、そのような企業が2020年のIPOに占める割合は1%に満たなかった。米国でもジェンダー平等の実現は道半ばであり、あらゆる分野において、セクシャルハラスメントの訴えが絶えない。大企業における昇給や昇進の際の男女差別も問題になっている。訴訟による企業イメージ悪化や(日本とは桁違いの)懲罰的損害賠償のリスクもあり、企業による改善の取り組みが進んでいる。一例として、Syndioのペイエクイティソリューションは、社内賃金データを解析して(男女や人種間の)差別待遇を防止することで、アカウンタビリティを向上して訴訟リスクを管理する。

(関連スタートアップ)

人材管理のCENSIAが$21M(Diversity & Inclusionを考慮したデータ解析)
https://www.censia.com/

社内賃金データ解析のSyndioが$17M(ペイエクイティ;差別待遇防止)
https://synd.io/

*金額は直近ラウンド;調達時期は2021年(8月末まで)

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参考記事:

The female CEOs on the Fortune 500 just broke three all-time records | Fortune
https://fortune.com/2021/06/02/female-ceos-fortune-500-2021-women-ceo-list-roz-brewer-walgreens-karen-lynch-cvs-thasunda-brown-duckett-tiaa/

The Market Minute: A Historic Year (So Far) For Woman-Led IPOs, But There’s A Ways To Go – Crunchbase News
https://news.crunchbase.com/news/the-market-minute-a-historic-year-so-far-for-women-led-ipos-but-theres-a-ways-to-go/

Here Are The New 2021 Unicorn Startups Founded By Women – Crunchbase News
https://news.crunchbase.com/news/here-are-the-new-2021-unicorn-startups-founded-by-women/

Venture Capital Is Still A ‘Boys’ Club.’ Let’s Start To Change That – Crunchbase News
https://news.crunchbase.com/news/venture-capital-female-gender-diversity/

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