【概観】
金融引き締めによる株式市場の低迷によりベンチャー投資総額は減少傾向となっている。とくにレーターステージを中心に投資金額やバリュエーションの調整が進んだ。
資金調達やExitの環境悪化に備えて、著名なスタートアップが人員を削減してバーンレートを抑えるなど、積極的な先行投資より早期の黒字化を優先する動きがみられる。
明るい材料として、ファンド募集が堅調で投資余力が積み上がっているので、選別的にではあるとしても、VCからスタートアップへの継続的な資金供給が期待できる。
【米国VCファンド募集】
2022年上半期のファンド募集総額は$121Bだった。過去最高だった2021年通年の87%に達している。
昨年の勢いを引き継いだ形だが、年明け以降の市場環境の変化を受けて、有力VCがファンド設定を前倒しした結果とも考えられる。
$1Bを超える大型ファンドの比重が高まっており、初回ファンドや小規模ファンドは苦戦気味のようである。
【米国VC投資活動】
2021年上半期のVC投資件数は9,421件で、通年換算すると、前年を7%上回るペースだった。投資総額は$144Bで前年を16%下回っている。
とくにレーターステージが株式市場の調整の影響を大きく受けており、投資信託、PEファンド、ヘッジファンドによるベンチャー投資は急減している。
一方、CVC投資は今のところ堅調で、大企業の成長戦略に占めるスタートアップとの協業の優先順位が下がっていないことがうかがえる。*
【米国VC投資先Exit】
2022年上半期のVC投資先Exitは831件で、前年を12%下回るペースとなっている。うちIPOは22件で、全体の3%に過ぎず、前年同期から88%減少した。
逆さ上場(SPACによる買収)の退潮もあり、Exitバリュエーションの総額は$94Bと前年から87%減少した。1社あたりの単純平均は$418Mから$50Mに低下している。
データ出典:National Venture Capital Association、米国IPO週報
* CB Insightsからは、NVCA/PitchBookとやや矛盾する傾向のデータが発表されている。グローバルな統計で日本の銀行系VCまで含んでいるといった違いによると考えられる。