IPOについて

Initial Public Offering(IPO:株式公開)は、企業にとってファイナンス面での大きな節目です。資本市場においてより大きな成長資金の調達が可能になり、業績を開示して株価の変動という形で市場の評価を受けます。ベンチャーキャピタル(VC)にとってIPOは、未公開の段階で投資した資金の回収やリターンの実現が可能になるExit(出口)のひとつです。一般投資家にとっては、株式市場に新しい銘柄がデビューして、将来の優良企業を発掘するチャンスとなります。実際に投資するかどうかは別としてもIPOは時代の変化を映す鏡として興味深いものです。

NYSEやNASDAQでのIPOは、2016年105社、2017年160社でしたが、それらの国籍、業種、規模はかなり多様です。米国の全上場企業数は1万社強とのことですが、そのうち米国企業は減少傾向にあり4,000社に満たないそうです。日本は全上場企業数が約3,600社、年間IPO社数は2016年83社、2017年90社でした。IPOでの平均的な資金調達金額は米国の方が日本より一桁は大きい印象です。アメリカの株式市場は、野球のメジャーリーグやシリコンバレーのスタートアップと同じ構図で、海外の有力プレーヤが集まることで活力を維持しています。

テクノロジーのスタートアップでいうと、株式公開や上場維持のコストが高いこと、未公開で大きな資金を調達できること、大手企業が早期に高値で買収することから、業界の景気がよい割にIPOはさほど多くありません。ネットバブルのピークだった1999年は486社が株式公開しましたが、その後のピークは2014年の275社でテクノロジー企業の比率も下がっています。どちらかというと選りすぐりとなっていて、業界内でもかなりの知名度や期待感があり、先行投資で急成長していて黒字転換するかどうか、といった段階でIPOするパターンが多いように思います。

実は米国では一般投資家がIPO株に投資することは容易ではありません。というのも日本のような個人投資家向けの平等な抽選は一般的ではなく、機関投資家や富裕層などの大口投資家や得意顧客、発行企業の関係者への割り当てが優先されるためです。該当するIPO株の引受証券会社に口座があるだけではなく、一定以上の口座残高と取引実績がなければ(例えば、TD Ameritradeの場合、口座残高25万ドル、直近3ヶ月の売買30回以上)、そもそも応募の資格さえ与えられないケースもあります。

もちろんIPO時には投資できなくても、IPO後は通常の上場株と同じように、売買することができます。

(2018年9月)

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